日本空手道不動会

title
「感謝の気持ち」

(特非)日本空手道不動会 副本部長 高井康亘


 今年の10月、道場生が初段の昇段審査を行いました。彼が道場に入門したのは5年半ほど前で、自分が道場を開いてから2年半程たった頃でした。


 当時まだ4歳の彼は、他の道場生が整列して正座をしている時もじっと座っている事が出来ず、動き回ってしまうことなどもありました。それを見ていた父親は、「周りの道場生に迷惑がかかるので、もう少し大きくなってから入れた方が良かったですか?」と相談に来ました。しかし、これは、この子が悪いのではなくて、自分の指導力の無さからくるものだと感じたので、「迷惑なんてことはありません!これも自分を含めてみんなの修行になるので気にしないでください。もう少し時間をください!」と、お願いしました。その言葉に理解をしてくれた父親は、彼をうちの道場に通わせてくれました。

 それから約1年、彼は大会に出場するまでになりました。彼は整列し、しっかりと正座をして、コートに入る時も大きな声であいさつをして、一生懸命試合をする事が出来ました。そして見事に準優勝したのです。大会後に父親がうれしいことを伝えてくれました。それは、「初めての大会だけど頑張れるか?」と彼に聞くと「僕、館長のために頑張る。」と言っていたと言うのです。正直、涙が出るほどうれしい言葉でした。自分は、彼のためにと頑張って指導していたつもりだったのに、彼も、僕を喜ばせるために頑張ってくれていたのです。その言葉は今でも自分の活力になっています。

それから月日が過ぎて、彼も黒帯を締める時がきました。正座も出来なかった彼は、今では大会に出れば常に上位、道場では小さい道場生の帯がほどけていれば自分から結びに行き、他の道場生を注意するという嫌な役回りも自分からかってでる程になりました。今では信頼して道場を仕切ってもらうことが出来ます。自分も彼に負けないように日々成長して行かなくてはならないと思っています。

 彼に、そして自分を信じて彼を預けてくれた両親に感謝の気持ちで一杯です。『ありがとうございます。』

 最後にもう1つ、彼の父親ですが、今では不動会の道場生となり、今年の全日本選手権大会の壮年の部に出場し、親子で日々汗を流しています。