(特非)日本空手道不動会 常務理事 大屋洋子
「誰かが亡くなって泣けたら、その人は家族だよ。」と、二代目宗家が私におっしゃいました。(え?どうして…)
ピンポーン
「はるき君いますか?」
と甲高い愛くるしい声でうちに遊びに来る息子の親友のY君。
呼び鈴がなるたびドアの前にそわそわにこにこ立っているY君を思い出します。
一昨年の七月、Y君は水難事故で亡くなりました。
たくさんの原因のピース。その内のたった一つが欠けていてくれるだけでY君は助かったのです。
なぜY君なんだろう。どうして…と思うのと同時に、誰にでも起こりえることなのだと、息子に留守番をさせるのが怖くなりました。仕事も空手もやめて、息子のそばにいたいと思う日々が続きました。
そんな気持ちのまま迎えた第二回目の北信越空手道選手権大会。時計記録係の方を探していると、Y君のお母さんがそれを聞きつけ、
「私やります!」
と言うのです。あれから二カ月もたっていませんでした。
そして大会当日、係集合の8時前にひと仕事をすませ、慌てて会場に来られました。
初めて見る空手の試合に、
「あの子はこんなこと好きそうだ、やらせたかった。」
と、係の仕事が終わってからも最後まで、応援してくれました。知っている子など一人もいないのに。
何もかもやめたいと思っていた自分が恥ずかしいです。
今、生きていることって本当は奇跡なのではないでしょうか。お母さんのお腹で神秘的な時間を過ごし、生まれてから今までずっと奇跡が続いている。自分で気がついたから、お父さんお母さんが見ていてくれたから、見知らぬ誰かが気づいてくれたから、命を失うことなく今があるのかもしれません。
「私でも誰かのためになっているといいな。」また続けていく勇気がでました。
「誰かが亡くなって泣けたら、その人は家族だよ。ここにいる人はみんな家族だよ。」
たくさん、たくさん泣きました。